中古マンションのリノベーションでは、「将来的に民泊として貸せる部屋にしたい」というご相談をいただくことがあります。ただ、ひとくちに「宿泊事業」といっても、法律上は大きく2つの制度に分かれていて、それぞれ建物に求められる条件が違います。今日は、その基本を簡単に整理してみます。
旅館業法 ― 本格的に、365日営業したい人向け
ホテル・旅館・簡易宿所などが対象になる、昔からある制度です。保健所の「許可」を得る必要があり、消防設備や衛生基準など、求められるハードルは高め。その代わり、年間を通して制限なく営業できるのが最大の強みです。また、建てられる用途地域も、ホテルや旅館と同じ区分に限られます。
民泊新法(住宅宿泊事業法)― 空き家活用や副業として始めやすい制度
2018年に施行された比較的新しい制度で、都道府県への「届出」だけで始められる手軽さが特徴です。住居専用地域でも営業できる場合が多く、既存の住宅をそのまま活かしやすいのもポイント。ただし、営業できるのは年間180日までという制限があります。家主が同じ建物に住んでいない「家主不在型」の場合は、管理業者への委託も必要です。
リノベーションの視点で見ると
- 旅館業として運営するなら、フロント機能や避難経路など、間取り自体に手を入れる設計が必要になることが多いです。
- 民泊新法での運営なら、住宅としての快適さを保ちながら、宿泊者にも住まい手にも心地よい動線を考えることが中心になります。
どちらを選ぶかによって、フルスケルトンリノベーションの設計方針も変わってきます。「収益物件として本格的に運用したいのか」「まずは小さく始めてみたいのか」——ここも、私たちがいつも最初にお聞きする「どう暮らしたいか」という問いのひとつの形かもしれません。
※自治体によっては、営業日数や区域について独自の上乗せ条例がある場合があります。実際に計画される際は、必ず管轄の保健所・自治体窓口にご確認ください。