Airbnbで部屋を探していると、思わず指が止まる物件があります。
その多くは、写真が綺麗というだけでは説明がつきません。何かもっと根本的な部分で、他の部屋と違って見えているのです。
私たちMADARAが古民家や空き家をリノベーションしながら日々感じているのは、「選ばれる部屋」と「選ばれない部屋」の差は、撮影テクニックではなく空間設計そのものにあるということです。今回は、その具体的なポイントを2つの視点からお伝えします。
写真映えという言葉の落とし穴
「Airbnbで人気を出すには映える写真を」とよく言われます。もちろん写真の質は大切です。しかし、照明を工夫し、構図にこだわった写真を撮っても、予約が伸びない部屋は少なくありません。
なぜなら、ゲストが写真を見て感じ取っているのは「綺麗さ」だけではないからです。
無意識のうちに、その空間が発している情報——ここに泊まったらどんな時間を過ごせるのか、どんな人がこの場所を作ったのか——を読み取っています。
つまり、映える写真は入口に過ぎず、その先に「見て取れる中身」がなければ、予約という行動には結びつきません。
ポイント1:空間でコンセプトがわかる
選ばれる部屋には、一目で「これはこういう宿だ」とわかる明快さがあります。
たとえば、古民家の梁や土壁をあえて残した空間であれば、写真を見た瞬間に「日本の暮らしを体験できる宿なんだ」と伝わります。
逆に、モダンな家具と古材が脈絡なく混在していると、ゲストは「結局どういうコンセプトの宿なのか」を読み取れず、他の候補と比較したときに記憶に残りません。
これは私たちが空き家再生でよく用いる「見立て」の考え方にも通じます。古いものをただ残す・隠すのではなく、意味を持たせて配置し直すことで、空間そのものが物語を語り始めます。
梁一本、建具一枚にも「なぜここにあるのか」という必然性を持たせることで、ゲストは写真の数秒間で空間の意図を直感的に理解できるのです。
コンセプトが定まっていない部屋は、どれだけ個々の要素が高品質でも「なんとなく良さそうな部屋」で終わってしまいます。
逆にコンセプトが明快な部屋は、ターゲットとなるゲストに強く刺さり、「この宿でなければならない理由」を生み出します。
ポイント2:体験が見える
もう一つの重要な視点は、写真の中に「体験」が見えているかどうかです。
ゲストは部屋のスペックを見ているのではなく、そこで過ごす時間を想像しています。縁側に座ってお茶を飲む、土間で靴を脱いで上がる、囲炉裏を囲んで語らう——こうした「行為」がイメージできる空間は、単なる部屋の写真ではなく、体験の予告編として機能します。
そのためには、家具の配置や動線設計の段階から「ここでゲストは何をするか」を具体的に描いておく必要があります。ソファをただ壁際に置くのではなく、窓からの光や庭の景色との関係性の中に置く。キッチンを見せるだけでなく、そこで誰かと料理をする情景まで想像できるようにする。こうした積み重ねが、写真越しにも伝わる「体験の解像度」を高めていきます。
体験が見える部屋は、ゲストの頭の中に滞在のイメージを先取りさせます。この先取りこそが、数ある候補の中から「ここに泊まりたい」という意思決定を後押しする力になります。
空間設計は、予約が入る前から始まっている
写真映えは、あくまで結果です。本質的に問われているのは、その空間が「誰のために、どんな体験を届けたいのか」を、設計の段階からどれだけ明確に持てているかということ。
- コンセプトが空間そのものから伝わるか
- その空間で過ごす体験がイメージできるか
この2つが揃って初めて、写真は「映える」だけでなく「選ばれる」力を持ちます。
MADARAでは、古い建物が持つ物語性を活かしながら、ターゲットとなるゲスト像から逆算して空間をデザインしています。「うちの民泊、写真は撮ったのに予約が伸びない」という方は、写真の撮り方ではなく、空間設計そのものを見直すタイミングかもしれません。