出張や旅行で高級ホテルに泊まったとき、部屋に足を踏み入れた瞬間に「はぁ…」と肩の力が抜けた経験はないだろうか。
決して広いわけではない。豪華な調度品が並んでいるわけでもない。それなのに、なぜあの空間はこれほどまでに人を落ち着かせるのか。
答えは「足し算」ではなく「引き算」にある。高級ホテルの空間には、居心地の良さを生み出すための明確な設計思想が存在する。今回は、その思想を分解し、自宅のリノベーションに取り入れる方法を考えてみたい。
高級ホテルが「落ち着く」3つの理由
1. 情報量が少ない
人は無意識のうちに、視界に入る「情報」を処理し続けている。家具、雑貨、書類、配線、生活感のあるモノたち——それらすべてが脳にとっての処理対象になる。
高級ホテルの客室は、生活感を徹底的に排除している。目に入るものが少ないからこそ、脳が「処理」から解放され、リラックス状態に入りやすい。これは単なる「ミニマルなデザインが好き」という嗜好の話ではなく、人間の知覚の仕組みに基づいた設計である。
2. 光がコントロールされている
高級ホテルの部屋に、家庭でよく見かるような天井の主照明(シーリングライト)はほとんど存在しない。代わりにあるのは、間接照明、スタンドライト、壁付けのブラケットライトなど、光源が分散し、陰影を伴う照明計画だ。
均一に明るい空間は「作業」には適しているが、「くつろぎ」には向かない。陰影のある光は、空間に奥行きと表情を与え、人の心拍数を落ち着かせる効果があるとされている。
3. 素材の「格」が統一されている
高級ホテルでは、床・壁・家具に使われる素材の種類が驚くほど少ない。木、ファブリック、石、金属——それぞれ1〜2種類に絞り込まれ、色調も統一されている。
素材がバラバラだと、空間に「雑多さ」が生まれる。逆に素材を絞り、質感を揃えることで、空間全体に統一感と「格」が生まれる。これは高価な素材を使うということではなく、選び方と組み合わせ方の精度の問題だ。
自宅に取り入れる「ホテルライク」設計の考え方
では、この思想をリノベーションでどう自宅に落とし込むか。MADARAが実際の設計で意識しているポイントを紹介する。
収納を「見せない」設計にする
生活感を消す第一歩は、モノを隠す収納計画だ。造作収納や可動式の建具を活用し、日用品や家電、配線までも視界から消す。散らかっていないのではなく、そもそも「見えない」状態をつくることが重要になる。
主照明に頼らない照明計画
天井の主照明一つに頼るのではなく、間接照明・スタンドライト・ダウンライトを組み合わせ、光源を複数に分散させる。特に間接照明は、壁や天井を照らすことで空間に奥行きを生み、夜の時間帯をぐっと上質なものに変える。
素材を絞り込む勇気を持つ
リノベーションでは「あれもこれも」と素材を足したくなるが、ホテルライクな空間には引き算の勇気が必要だ。床材、建具の色、家具のトーンを2〜3種類に絞り込むだけで、空間全体の統一感が大きく変わる。
余白をデザインする
家具やモノで空間を埋め尽くさず、あえて「何もない場所」をつくる。この余白こそが、視線の抜けと心の余裕を生み出す。ホテルの客室が広く感じられるのは面積のせいではなく、余白の設計によるところが大きい。
まとめ
高級ホテルの「落ち着き」は、偶然の産物ではなく、情報量・光・素材という3つの要素を緻密にコントロールした結果生まれる。
そしてこれらは、決して大規模な新築でなければ実現できないものではない。既存の住まいをリノベーションする中でも、収納計画・照明計画・素材選定・余白の設計という4つの視点を持つだけで、自宅は驚くほど「ホテルライク」な空間へと生まれ変わる。
MADARAでは、既存の建物が持つ個性を活かしながら、こうした設計思想を取り入れたリノベーションを数多く手がけている。日常に「非日常のような落ち着き」を取り戻したい方は、ぜひ一度ご相談いただきたい。
都内のタワーマンション、横浜市西区・中区、みなとみらいエリアでマンションリノベーションをご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。もちろん、その他のエリアの方も大歓迎です。