「写真映え」する空間と、「住んでいて心地いい」空間は違う
SNSやポータルサイトには、美しくスタイリングされたリノベーション事例の写真があふれています。しかし、写真の中でどれだけ美しく見える空間でも、実際に住んでみると「なんとなく落ち着かない」「思っていたのと違う」と感じることは少なくありません。
その差はどこから生まれるのでしょうか。写真は、あくまで「視覚」という一つの感覚だけを切り取ったものです。けれど人が空間で実際に過ごすとき、感じているのは視覚だけではありません。壁に触れたときのひんやりとした感触、床を歩いたときの足裏の感覚、光が移ろう時間の中で変わる陰影——こうした視覚以外の感覚が、住み心地や格の実感をつくっています。
MADARAが設計で大切にしているのは、写真映えという一次元的な評価軸ではなく、五感、とりわけ「視覚(光と影)」と「触覚(質感)」に働きかける空間づくりです。
光と影——「明るさ」ではなく「陰影」をデザインする
人の目は、実は「均一な明るさ」よりも「明暗の変化」に反応するようにできています。すべてが同じ明るさで照らされた空間は、フラットで印象に残らない一方、光と影のコントラストがある空間は、時間帯や視線の動きによって表情を変え、飽きることがありません。
MADARAの照明計画では、以下のような視点で「陰影」そのものを設計します。
- 天井や壁の素材の凹凸に、あえて斜めから光を当てて陰影を強調する
- 左官仕上げの壁に間接光を這わせ、鏝(こて)の跡や質感の揺らぎを浮かび上がらせる
- 窓の配置や障子・格子といった建具によって、時間帯ごとに変化する自然光の陰影を室内に取り込む
- 一室の中でも「明るいゾーン」と「陰影の残るゾーン」を意図的に分け、空間に緩急をつける
光は、単に「見えるようにするための道具」ではありません。素材の質感を引き立て、空間に時間的な変化と奥行きを与える、設計の主要素として扱うことで、住まいの印象は大きく変わります。
素材のtactile(触覚)——見るだけでなく「触れて感じる」設計
もう一つ、高級感を語るうえで見落とされがちなのが「触覚」です。人は無意識のうちに、手すりや扉の取っ手、壁の一部、床材などに触れながら暮らしています。その一瞬一瞬の感触の積み重ねが、住まいへの信頼感や満足度を形づくっています。
MADARAでは、素材を選ぶ際に「見た目の美しさ」だけでなく、「触れたときにどう感じるか」を必ず検討します。
- 左官壁:鏝で仕上げた壁は、工業製品のクロスにはない微細な凹凸があり、触れるたびに手のぬくもりや職人の仕事の痕跡を感じさせます
- 無垢材:経年で色や質感が変化していく素材は、触れるたびに「育っていく」実感を与えてくれます
- 天然石:ひんやりとした触感とわずかな凹凸は、既製品のタイルでは再現できない重厚感を生みます
- 真鍮や鉄などの金属:使い込むほどに味わいが増す経年変化素材は、触れる場所(取っ手・スイッチプレートなど)にこそ効果を発揮します
こうした素材は、視覚的な美しさに加えて「触れて確かめたくなる」感覚的な満足を与えてくれます。特に、扉の取っ手やスイッチ、手すりなど、日々必ず手が触れる部位にこそ、素材と質感へのこだわりを集中させることが、体感としての高級感につながります。
光と質感は、掛け合わせることで効果を発揮する
光と影のデザイン、そして素材の質感——この二つは、それぞれ単独で語られることが多いのですが、実は掛け合わせてこそ真価を発揮します。
たとえば、左官壁にどれだけこだわっても、フラットな均一光の下では、その質感の陰影は消えてしまいます。逆に、どれだけ照明計画に工夫を凝らしても、素材そのものに質感がなければ、光は反射するだけで陰影を生みません。
- 左官壁に、斜め下からのウォールウォッシャー照明を当てることで、鏝跡の陰影が際立つ
- 無垢材のテーブルに、天井からの直接光ではなくペンダント照明の柔らかな光を落とし、木目の陰影と艶を引き立てる
- 天然石の玄関床に、足元の間接照明で光を這わせ、石の表情を浮かび上がらせる
このように、**「質感のある素材」×「陰影を生む光」**の組み合わせを設計することで、視覚と触覚の両方に響く、記憶に残る空間が生まれます。
五感の設計は、既存の建物を活かすことから始まる
MADARAが大切にしている「見立て」の思想は、こうした五感への配慮とも深くつながっています。新築のようにゼロから素材を選ぶのではなく、既存の建物がもともと持っている骨格や質感、光の入り方を読み解き、そこに手を加えることで、より豊かな陰影と質感を引き出していく——それが私たちの考えるリノベーションです。
築年数を重ねたマンションだからこそ持っている構造の癖や光の入り方も、視点を変えれば、唯一無二の陰影と質感を生み出す素材になります。「新しくする」のではなく「活かして深める」という発想が、五感に響く住まいづくりの出発点です。
こんなエリアでのご相談をお受けしています
横浜市中区・西区・みなとみらいエリアのマンション、都内のタワーマンションで、「今の住まいを、もっと質の高い空間にしたい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。間取りや面積の制約がある中でも、照明計画と余白のデザインによって、空間の印象を大きく変えるご提案が可能です。
もちろん、上記エリア以外のマンション・戸建てのリノベーションについても、幅広くご相談いただけます。エリアを問わず、まずはお気軽にお問い合わせください。