水と生命のリズムを歩く
——二ヶ領用水沿道遊歩道ランドスケープデザイン最初に現地を見たとき、正直「暗いな」と思いました。
緑が鬱蒼と生い茂り、せっかくの水辺なのに閉鎖的な印象でした。川崎市を流れる歴史ある用水路「二ヶ領用水」。江戸時代から続く水辺が、都市の中で少し息を潜めているような感じがしました。
でも同時に、ここには可能性がある、とも感じていました。桜並木がある。水辺がある。これをもっと美しく見せたい。桜の名所として、素敵な空間演出をしたい、と。
リノベーション前後の比較
都市の中の水辺という資産
二ヶ領用水は江戸時代に整備された歴史ある用水路です。川崎市の都市環境の中で長く人々の生活と関わってきた水辺で、周囲には桜並木が連なり、春には多くの市民が訪れる花見の名所でもあります。
しかし普段の季節には、人々はこの場所を「通路」として通り過ぎてしまう。水辺が持つ本来の魅力が、十分に活かされているとは言えない状態でした。
この計画では、水辺の自然・都市の暮らし・人の活動、この3つの関係を再編集することで、水辺空間の新しい価値を生み出すことを考えました。
完成後の二ヶ領用水沿道遊歩道
コンセプト——いのち・水・川
水は、生命の象徴です。川は流れ、リズムをつくり、風景をつくります。
この計画では、水の流れが持つ有機的なリズムをランドスケープデザインの骨格としました。直線的な都市空間とは異なる、生命の動きを感じる曲線の空間構成です。
用水路の流れをモチーフにした曲線的なゾーニングによって、空間全体に柔らかな動きを与えました。ウッドデッキや植栽を水のリズムのように配置することで、川に近づく場所、木々に包まれる場所、視界が開ける場所——といった異なる空間体験が連続的に現れます。
歩くことで風景が変わる——シークエンスデザイン
ランドスケープは「見る空間」ではなく「歩く空間」です。
歩くことで風景が連続的に変化するシークエンス(空間の連続体験)を設計しました。川に近づく場所、広がりを感じる場所。歩くことで水辺の風景が少しずつ変わり、都市の中に新しい時間の流れを生み出します。
この場所には、長い時間をかけて育ってきた桜並木があります。それらの樹木を守りながら、包み込むようにウッドデッキを配置しました。春には桜を間近に感じられる、都市の中の特別な花見空間になっています。
ウッドデッキ——桜並木を包み込むように配置
夜の水辺の風景
昼と夜では、空間の表情は大きく変わります。
夜間には、デッキと背面ルーバーに隠された間接照明によって、水辺にやわらかな光が広がります。強い光ではなく、水辺の景観を引き立てる落ち着いた照明。コスギアイハグと緑道も、ライティングで演出しました。夜でも安心して歩ける、温かみのある都市景観を目指しました。
夜のデッキ——間接照明がやわらかく水辺を照らす
夜の二ヶ領用水沿道
完成して、初めて歩いたとき
さわやかで、明るくて、緑が広がっていて気持ちがいい。
桜の並木と二ヶ領用水がよく見える。最初に感じた「暗いな」という印象が、完全に塗り替えられていました。
その後、市民が使っている様子を見に行きました。子連れの家族が楽しそうにしている。子供が嬉しそうに走り回っている。大人はデッキに腰かけてのんびりして、花見の時は寝転がったりもしている。
この空間を楽しんでいてくれている。それが、一番嬉しかった。
広場と緑道——市民が集う交流空間に
数年後、この遊歩道の目の前に仕事が来た
この遊歩道が完成してから数年後、コスギアイハグ内のテナントから設計の依頼をいただきました。スタジオフラットという生活介護事業所のリノベーションです。
私たちがランドスケープ設計した遊歩道の、すぐ目の前です。
場所との縁が、空間を通じてつながっていく。この仕事をしていて、そんなこともあるのか!と思いました(笑)
かつては単なる通路だったこの場所が、
今は市民が集う水辺の公共空間になっています。
都市の中にありながら、水の流れを感じ、
風を感じ、季節の変化を感じられる場所。
人と自然の関係を、もう一度結び直す空間として
再生されました。
空間は、使う人の日常を変えることができる。
この遊歩道を歩くたびに、そのことを感じています。
空間づくりについて、まずお話を聞かせてください。
どんな経緯で、どんな空間をつくりたいのか。
その話から、一緒に始めましょう。
※ご相談は無料です