モノづくりの原体験 ——人に喜んでもらえる喜び
私がものづくりを続けてきた原点は、小学校低学年のころにあります。
マッチ箱を3つ用意して、中のマッチを全部取り出す。3つを重ねて合わせ、周りに千代紙を貼っていく。背面も千代紙で塞いで、引き出し部分には紐で取っ手をつけると、小物入れのできあがりです。
マッチ箱と完成した小物入れ
最初はうまくいきませんでした。千代紙を貼っても、マッチ箱同士の溝が浮き出てしまう。でも何度も繰り返すうちに、だんだん上手くなった。まっすぐ貼れるようになって、仕上がりがきれいになっていく。その過程が、楽しかった。
作るのが楽しいから、大量生産していました。でも、コレクションするつもりはない。だからどんどん人にあげていました。もらって迷惑だった人もいたかもしれません(笑)。
あるとき、近所のおばちゃんに渡したときのことが、今も記憶に残っています。
「キレイにできてるね!こんなにキレイにできたのをもらっていいの!?」
嬉しそうに言ってくれた。
そのとき感じた気持ちは、うまく言葉にできなかった。自分が楽しんでつくったものを、誰かが喜んでくれる。その喜びは、自分だけで何かを成し遂げたときとは、まったく違う種類のものでした。
相手が喜んでいる。自分も嬉しい。その境界が、どこかで溶けているような感覚。一緒に喜んでいる、という感じ。
誰かと一緒に喜び合った体験は、誰にでもあるのではないでしょうか?
自分だけの喜びではなく、相手の喜びが自分の喜びになる。ともに喜ぶ。一体となって喜び合う、そんな体験。
当時の私には、それを言葉にする力がありませんでした。でもその感覚は、ずっと心の中に残り続けました。
今思えば、あのおばちゃんの笑顔の瞬間が、私がものづくりを続けてきた原点だったのだと思います。
幼少期の高瀬友基
人と一体となって喜び合う。
相手の喜びが、自分の喜びになる。
その感覚が、私がものづくりを続けてきた原点です。